BLAU DESIGN’s blog

前代未聞のモノを創る。モノづくり記録です。

世界一美しい鞄を創る⑨ 懇願

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革工房の孤高の革職人、大島さん。

なんて軽い優しい笑顔で恐ろしいことを言うんだろう。

 

前回までの記事はこちら

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この2週間。

 

彼は、何も手を付けてくれていませんでした。

 

 

 

でも、冷静に考えます。

 

 

そう、大島さん。

決して悪気は無いんです。数少ない国内の革工房、それも腕のよい職人。

それも1人でされているので、土日の休みすら無いんです。

 

 

そう、悪気は無いんです。

 

 

 

でも、僕もそう。

 

前を向いたらキリがない。(クリエイティブには終わりがない。)

 

後ろを向いたら後がない。

 

もう、本当に時間がない。

 

 

 

ここは嫌われてもいい。

無理を承知でお願いするしか無い。

 

 

 

「忙しいのは十分承知です。

十分承知の上でお願いがあります。どうしてもあと1ヶ月で5個の鞄のサンプルを完成させたいんです。

 

いや、完成させないとヤバイんです。

ほんとに、ほんとにお願いです。僕も出来ることはなんでも手伝います。

なんとか、なんとか、ご協力していただけないでしょうか?」

 

 

 

「そうっすよねぇ。。。 ・・・・そうっすよねぇ。

 橋本さん、夜は忙しいですか?」

 

 

 

 

ん? 飲み?

 

 

 

私「夜はいつでも大丈夫ですよ」

 

 

 

大「明日、22時くらいに来れます? いつもの仕事が終わってから作業をするとなるとそれくらいの時間になるんですが、大丈夫ですか?」

 

 

 

私「 全然大丈夫です!

 

 

 

 

 

ということで、明日の夜からサンプル製作の作業に入ってもらうことになりました。

 

とりあえず、確約が出来たので一安心。。ふぅ〜

 

 

 

 

安堵なのか、それとも日本語では表現できない感覚なのか、

そんな感じで工房を後にし、車のハンドルを握りながら考えを整理する。

 

 

とりあえず、革に関しては、下駄を預けるしか無い。

 

それしか無い。信用。

 

 

残るは。。。。。

 

 

 

 

内装だ。

 

 

 

 

内装。

 

鞄の中には、人によっていろんなものが入る。

よって、革で内装を施すのはNG。

 

なぜなら、すぐ引っかき傷が出来るから。

 

 

よって、高級感漂うスウェードを内装に施したい。

 

 

 

でも。

 

 

でも、この時点でいつものようにGoogle先生で業者を探す余裕はない。

 

 

実は少し当てにしていた人がいる。

 

 

 

 

 

実母だ。

 

 

 

 

 

母は、40年近く、ファッション業界の第一線でパタンナーとして腕を奮ってきた。

ファッション業界でいうパタンナーというのは、

デザイナーが書いた平面のデザインをイメージどおりに仕上がるように想像して、その裁断パターンを作って、布に当て、裁断して縫い合わせるような仕事らしい。

 

 

クリエイティブ。

 

 

以前、当時の母の部下だった人に聞いた話だと、

 

「橋本さんのお母様は、ほんとに凄かったですよ。ぶっちゃけ日本で10本の指に入るくらいの職人だったんじゃないですか?」

 

 

 

 

 

マジで?

 

 

 

 

おふくろ、そんな人だったの?

 

 

僕が子供の頃は、すぐビンタする母。

還暦を過ぎてからは健康食品にハマった母。

マルチまがいの健康食品を信仰している母。

ビールを飲むと目が据わる母。

 

 

 

そんな母も今年でもう70歳。

 

 

 

今は千葉の家で、近所の老人を集めて健康体操とかしているとか。。

ナンノコッチ

 

 

 

まぁ、そこは腐っても親子。

翌日の土曜日、アルミのフレームを持って千葉の実家へ向かう。

 

 

 

「何?久しぶりにどうしたの? 仕事は上手く行っているの?」

 

 

 

「うん、そのことなんだけどね。

 

(中略)それで、この鞄の内装を作って欲しいんだよ。で、これが生地ね。」

 

 

 

「えぇ〜 出来ないよ〜。」

 

 

 

「やって。」

 

 

 

「だって、これ、スポンジ生地にスウェードを縫うんでしょ?」

 

 

内装は、1mmのスポンジにスウェードを縫い付けて、それをアルミフレームの内側に貼り付けます。(※あくまで展示会用のサンプルの仕様で、製品版はもっと高度です。)

 

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「そう、そうなんだよ。おふくろだったら軽いでしょ(笑)」

 

 

 

「私が持っているミシンだと、スポンジに通る針が使えるかわからないのよ。スポンジとか、特殊な裏地に使う生地に通す針は太い針が必要で、今のミシンではその針が使えないかもしれないよ。」

 

 

 

ここにきて、大田区の工場みたいなことは言わんでくれ。。。

 

 

 

「あ、そうなの? でも、なんとかやってみてくれないかな?」

 

 

 

 

半ば強引にお願いして、ビールのプルトップを開けます。

 

 

プシュー

 

 

私は普段、フィットネスジムでは重いバーベルを持ち上げますが、

ここでは母を持ち上げます。

 

 

 

「世界一美しいブリーフケースを作りたいんだ。こんなこと、世界中の誰もやっていないんだよ。あなたの息子がそれをチャレンジするんだ。売れるかどうかは分からないけど、やる価値はあると思うんだよ。

 

知っての通り、僕はデザインの勉強もしたことはないし、今も専門的にするつもりはない。でも、感覚の具現化はマニュアルはいらないと思うんだよ。

それに、(今までの工場での断られ具合を少々大袈裟に言う)日本のモノづくりの根源はクソだよ。70年代の高度成長期で止まっちまってる。

今は個人、もしくはスモール企業がイノベーションをする時代なんだよ!

これを即興でできるのはお袋しかお願い出来ないんだよ!」

 

 

 

 

イノベーションって何?」

 

 

 

 

そこ?

 

 

 

わかりやすく説明しました。

 

 

 

無いものを創るということ。

 

 

 

その後は、母が夢中になっている健康食品のネットワークビジネスの話になったり、子供の頃に話になったり、酒浸りの親父の話になったり。。

 

 

 

とりあえず、持ち上げまくりました。

 

 

 

感覚重量でいうと、

 

 

 

90kg

 

 

 

あげたことねぇ〜

 

 

 

とりあえず、残り一個のアルミフレームのサンプルと日暮里で購入した最高級のスウェードの生地を置いて翌日東京に戻りました。

 

 

 

 

たのむよ おふくろ。

 

 

根性見せてくれ!

 

もう、時間が無いんだよ・・・・。

 

 

 

頼むね!

 

 

 

しぶしぶ頷く母がいました。

 

 

完成版はこちら

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世界一美しい鞄を創る ⑩ へ続く

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世界一美しい鞄を創る⑧ もうだめかもしれない。

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前回まででようやく鞄のアルミ削り出しフレームの完成は見えてきた。

 

前回までの記事はこちら

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長かった。 ほんとに長かった。

 

 

ようやく最後の行程、表面の革、として内装の仕上げを残すのみ。

展示会まで残された時間は約2ヶ月半。

 

なるべく早く完成させて、展示会場で配布するパンフレットも作らなければならない。

 

まずは革だ。

 

早速革工房をGoogle先生に聞いてみます。

革工房と言えば東京下町。

 

「東京 墨田区 台東区 革工房」

 

 

あれ?

 

 

思ったよりもヒットしない。

それでもいくつかリストアップして、いつも通りまずは電話連絡をする。

 

 Ring Ring Ring...

 

「実はアルミのフレームをベースにした鞄を企画しておりまして、それで、そのアルミのフレームの上に革を貼っていただきたいのですが、そのようなご相談は御社の範疇でしょうか?」

 

 

 

工房「えぇっと、ちょっとお電話だとあまりイメージがつかないのですが・・・」

 

 

 

「すみません。例えば、アルミで出来た昔のお弁当箱を想像していただけますでしょうか?そのフタの上の面に革を貼りたいんです。」

 

 

 

工場「アルミに革は縫えませんよ。」

 

 

 

「まぁ、それはそうだと思うんですが、何か方法があるのかというところからご相談をさせていただければと思うのですが。。」

 

 

 

工場「申し訳ないのですが、他の仕事も立て込んでいて、ちょっとお受け出来そうにありません。」

 

 

 

まーたこれだ。

 

 

 

なんで簡単に断ることが出来るんだろう。

ちょっとくらい会って、相談してくれてもよかろうもん。

 

 

まぁ、まだ他に幾つか工房はある。どこか、1つくらい相談に乗ってくれるだろう。

 

 

 

 

 

 

甘かった。

 

 

 

 

 

そもそも、国内で小ロットやサンプルを作ってくれるような革工房自体の絶対数が少ない。途中で仕入れた情報だと、ほとんどが費用の安い中国に仕事が流れていき、国内の工場、工房はどんどん減っていったそうだ。

 

それに、国内の残っている工房はそれなりにルーティンの仕事で忙しく、職人の人手不足も加わって、会って相談することすら出来ない。

 

 

 

それでも、探して探して、電話して、繰り返し当たってみたところ、

ようやく1件だけ好感触な工房が見つかった。

 

 

 

「(中略)と言う訳で、アルミで出来ているフレームに何らかの形で革を貼りたいんです。」

 

 

 

工房「やってみないとわからないですが、大丈夫じゃないですか?」

 

 

 

Got it !

 

 

 

最終的にいっつもこのパターンだ。なぜ最初からこうならないのだろうか・・・。

 

 

 

翌日東京スカイツリーのほど近くにある墨田区の革工房を訪れました。

 

 

ほんの二部屋くらいの大きさのその工房は、作業机、二台のミシン、革漉きマシン、そして大量の革のロールが鎮座していました。

 

 

 

「あの、先日お電話いたしました橋本です。」

 

 

 

「大島です。どうもどうも(笑顔)」

 

 

 

 

あれ? なんて軽やかな始まり?

 

 

 

大島さんは30代後半から40代前半の下町の若いにーちゃんのような職人です。

 

どうやらこの工房で、は基本的に彼が一人で作業されているようです。

作業中のテーブルには、製作途中のクロコダイルの長財布がたくさん山積みになっていました。

 

 

 

これは期待できるぞ。

 

 

 

「(中略)それで、このアルミのフレームに革を貼りたいんですが、どうですか?」

 

 

 

「大丈夫だと思いますよ。2mmの穴が3mmピッチで周囲に空いていれば手縫いで縫うことも出来ますし、接着もできるんじゃないですか?」

 

 

 

マジっすか?

 

 

 

「内装はどうします?革であればやってみますけど」

 

 

 

「内装はスウェードを貼りたいんで、別で探してみます。」

 

 

 

「分かりました。型紙とかは無いですよね? 」

 

 

 

「ケースを型取りして作ります。普通の工作用紙で大丈夫ですか?」

 

 

 

「大丈夫ですよ。型紙ができたら送ってください。時間を見つけてサンプル作っておきますよ。」

 

 

 

 

Woooooooo!

 

 

 

 

最高じゃないか!

 

 

革職人ってイメージしたら頑固一徹をイメージしていたけど

腕は良さそうだし、人柄も柔らかだし。

 

 

僕はアルミフレームのケースを工房に預けて、その足で会社に戻り、

途中の東急ハンズで購入した工作用紙に、鞄の周囲をトレースし、丁寧にハサミで切り取り、周囲を紙やすりで磨いてバリをとり、その日のうちに大島さんに送りました。

 

 

あとは、サンプルの上がるのを待つのみ(笑)

 

 

ふふ。

 

 

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さて、大島さんがサンプルを作ってくれているこの間にもやることがたくさんある。

 

 

 

 

今思えばこの2ヶ月間は恐ろしいほどのスピードでいろいろなことをしていた。

 

 

 

 

そうでもしないと、サンプルが間に合わず、出展費用を含めた展示会の費用、約200万円が無駄になってしまう。

 

 

まずは、細かい部品だが、大事な「ヒンジ」。

日本名「蝶番」。

 

鞄のフタとケースをつなぎ合わせて、それを軸に開閉するものだ。

 

 

一般的にはヒンジは種類も多く、そんなに苦労はしないと思いがちだが。。

 

 

以前、ゼロハリバートンの鞄を持ち歩いていた時があった。

当時の僕は、広告の仕事をしていたので、鞄の中は常に書類でパンパンだった。

 

ある日電車に乗っている時に、何かの拍子でラッチが外れ、鞄のフタが下に180度開いた。

 

 

その瞬間、鞄の荷物はまるでスローモーションのように、すべて車内に広がった。

 

 

エロ本が入っていなくて、ほんとに良かった。

 

 

万が一にも、こんなことがあってはいけないので、通常使われるヒンジではなく、特殊なヒンジを採用する必要がある。

 

 

ふと、机の引き出しにカルティエのボールペンが入っていた赤いケースがあることを思い出した。

 

これは宝石箱と同じような開閉感で、少し力を入れてフタを開けると一気に開き、

少し力を入れてフタを閉めると一気に閉まる。

 

どうなってんだ?

 

と思い、バラします。

 

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バラしてわかったことは、コの字型のバネがヒンジについているだけ。

 

ただ、これだと、開けるか閉めるのどちらかになる。

 

 

 

 

特殊なヒンジ。

 

特殊なヒンジ。

 

そう、トルク(抵抗力)のあるフリーヒンジだ。

 

 

これはどういうことかというと、

フタを任意の位置で留めることが出来るというスグレモノである。

 

 

例えば鞄を左手にもって、右手でフタを開けて中のものを取ろうとしたとき、

普通であれば、フタは180度勝手に開いてしまうため、一度鞄を机の上に置く必要がある。

 

しかし、フリーヒンジを使えば、任意の位置でフタを留めることが出来るため、立ったままで、フタを好きな位置で止められるため、中の荷物が溢れる心配がない。

 

些細な事でも、実はとても重要なことなのだ。

 

つまり、こんな中途半端な位置でもフタが留まる。(完成品)

 

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イエイ!

小さなところも妥協なく、考える。

 

 

 

 

さて、次はアルミフレームの二次処理である。

 

 

一般的にはアルミは削りっぱなしでほっておくと、酸化して、だんだん白っぽくなってくる。

また、それだけではなく、本来柔らかい金属のため、表面に傷が付きやすい。

 

 

そこで、一般的にはアルマイト処理という二次処理をおこなう。アルマイトを施すとアルミの表面が強くなるのだ。

 

 

アルミフレームの肌に関して、僕には1つのイメージが合った。

 

 

AppleMac Bookである。

 

 

金属製のユニボディでありながら、決して冷たいイメージがなく、逆にどことなく

愛らしい手触りだ。

 

 

基本的に素材が同じなので、出来るはず。・・・・だと思う。

 

 

早速Google先生

 

アルマイト処理 関東」で検索してみる。

 

これは幾つかヒットする。

その中で、比較的東京に近い工場に電話連絡をし、アルミフレームを持参し見積をもらうことにした。

 

 

依頼する作業内容は、まず切削したばかりのアルミフレームに、細かな砂を吹き当てて表面を少し粗す。これはサンドブラストという処理(梨地処理とも言う)で、あえて目に見えない傷を付けることによって、傷を付けにくくする効果がある。

 

そのブラスト処理をしたものに、アルマイト処理をする。アルマイト処理は特殊な液体が入った水槽にアルミ素材を一定の時間漬け込むと、その処理が完成する。

 

見積の結果、多摩川の土手沿いにある工場にお願いすることになった。

工場長は北斗の拳に出てくる雑魚キャラのボスのような出で立ちなのだが、人は良い。

 

 

そこで、砂の大きさ、アルマイト処理の色など、幾つかの組合せを試して、ようやく納得の行く処理が出来上がった。

 

 

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ほぼ一緒(笑)

 

 

そして、もう一種類、今まで誰もやっていない鞄の表面処理がある。

それを是非やってみたい。

 

 

 

と、その前に、

そろそろ革の表面のサンプルが出来ているかもしれない。

 

 

 

大島さんに携帯でショートメールを送る。

 

 

「明日あたり、行っても大丈夫ですか?」

 

 

「午後だったら、大丈夫っすよぉ!」

 

 

ひゃっほー

 

 

もうゴールはすぐそこだ!

 

 

 

 

 

いやぁ、ほんとに長かった。

ここまで怒涛の10ヶ月。

 

イラストを書いても、図面が無いと断られ、

 

図面を書いても工場に出来ないと断られ、

 

アルミに革は貼れないと断られ。

 

ある種のいじめにも近い状況だったかもしれない。

 

 

いやぁ、ほんとに長かった(涙)

うぅ

 

 

 

踊る心をなんとか押さえて、工房の前に車をとめ、勢い良くドアを閉め、

工房の扉を開け大島さんの背中に声を掛ける。

 

  

 

「お疲れ様でーす!(笑顔)」

 

 

 

「おつかれーっす(笑顔)」

 

 

 

「いろいろと、無理言ってすみません! それで上手く出来ました?(笑顔)」

 

 

 

ちょっと仕事が立て込んでて、まだ手を付けてないんっすよ。すんませーん(笑顔)

 

 

 

私「えっ?」

 

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ぶっ倒れそうになりながら、

全身の毛という毛が逆だって、白髪になったような気持ちになった。

 

小川直也に何発ものSTOを受けたくらいの衝撃だった。

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東スポWebからの引用

 

 

 

僕の視線の先には、数日前に送った鞄の型紙の封筒が封も切られずにそこに置いてあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

もうダメかもしれない。

 

今度こそ、もうダメかもしれない。

 

 

 

もう二月中旬。

 

 

展示会用パンフに入れる鞄の撮影も含めると、どんなに遅くても3月の中旬までにすべてのサンプルを仕上げないといけない。

 

 

 

 

 

もうダメだ。

もうダメだ。

 

 

人生で初めて、フリーズした。

 

完成版はこちら

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世界一美しい鞄を創る⑨へつづく

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世界一美しい鞄を創る⑦ 限界まで軽量化を考える

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前回までの記事はこちら

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さて、中国大連で作ったアルミフレームのサンプル。

 

 

大連空港でビールを飲みながら、どうやったら軽量化ができるか、

まるで人生に思い詰めた人のように、視線をアルミフレームから外さず約30分。。

 

その間、4人の外国人に尋ねられたこと。

 

 

 

What is this?  case? bag?   I`ve never seem like this.

(これはナンデスか? ケースですか? バッグですか? ミタコトアリマセン。」

 

 

 

そうだろう、そうだろう。

 

僕だって見たこと無いもん。

(とりあえず、注目されることは分かったが、それよりも手に持ってもらえることを考えないと。。    軽量化だ。)

 

 

 

2.5kgのモノを1kg以下にするには単純に50%以上、さらにドコかを削らなければならない。

 

 

 

そもそもそんなこと可能なんだろうか。。。

 

 

 

 

大連から帰国後、図面を書いてくれたE金属の田沼さんのところへ現物を持って訪ねます。

 

 

「これこれこういうわけで、一応図面通りのものは出来上がったんですが、とにかく重いんですよ。これに革を張って内装を付けたらゆうに4kg弱になりそうなんですよ。

なので、現状の形のまま、薄く出来るところは極限まで薄くしたいんです。」

 

 

完成品の鞄の目標重量は2,000g以下

 

 

まず、鞄のフチの部分(一般的な鞄で言うマチの部分)の厚みが5mmもあったので、

それを思い切って1mmにしてCAD図面化してみる。

 

 

それを一部分のみ3Dプリンタで出力し、実際の厚みを手で触って感触を確かめてみることに。

 

出来上がった3Dプリンタの部分サンプルを触ってみると、もう紙のように薄い。

 

「おお、いいんじゃない!?」と触っていたら、

 

 

 

 

 

すぐに割れた。

 

 

 

 

 

これ、仮にアルミで切削したとしても、何かの衝撃があれば割れるか、凹むよな。。。

 

 

 

 

色々と検証した結果。

5mmのフチはどうやっても3mmまでしか削り込めない。

 

さらに、鞄の表裏が一番大きな面積なので、その部分をなんとかしたい。

 

そこで、その面積部分の内側にリブ(格子状の骨組みのような形)を作り、リブに囲まれた箇所を極限まで薄くしてみる。

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リブがあるので、割れたりはしないはず。

その他、細かな部分を出来る範囲で少しでも薄くし、図面を引き直した。

 

 

それを再度中国に送り、更に2週間後、再び大連に。

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(・・・・タクシー、まーた英語が通じねぇ。)

 

 

大連のその工場で作ってもらった

セカンドサンプルは、確かに軽くなっていた。

 

フレーム自体の合成も、いろいろな方向に手で曲げてみてもしなりもしない。

 

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*1

 

しかし、未だその重量

 

 

1.6kg。  1,600g。

 

 

少し不満は残るが、切削ではこれが限界かも知れない。

展示会までの時間がもう無いので、5つのセカンドサンプルを持って帰国することに。

 

 

あと、600g。 たかだか600g。

 

 

なんとかならないだろうか。。

 

 

まさに、計量前のボクサーのような気分だった。

 

 

 

 

 

 

それは、

自宅のテーブルの上に出来上がったアルミフレームのセカンドサンプルを置いて、

その上に東急ハンズで買ってきた革を合わせて完成スタイルをイメージしていた時。

 

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ん?

 

ん?

 

 

革をかぶせる部分(鞄の表面の一番面積が大きいところ)は、

革を貼ったら外から見えないじゃないか。。

 

そうだよ。

見えないよ!

 

 

開けられるだけ、穴を開けよう!

 

 

そうすれば、もしかしたら600gだったら開けられるかもしれない。

 

 

で、どうやって開けるか?

 

流石に金属のDIYじゃ無理だろう・・・・。

 

 

町工場に頼んだら、また図面だなんだかんだと時間ばっかりかかることは

目に見えている。

 

 

そうだ。

どっかの工場で、穴を開ける機械を貸してくれないだろうか。。。

 

 

いや、無理を言ってでも使わせてもらおう!

(ちなみに、この時点ではTech shopなどの共同加工場は開業していません)

 

 

Google先生で聞いてみる。

 

 

が、あったりまえかもしれないが、

金属加工ド素人に大事な機械を貸してくれるところなんて、ありゃしない。

 

 

でも、それしか無い。

 

 

探しに探して、寿々つなぎのようなネットサーフィンをしていると、

とあるページにたどり着いた。

 

 

メタルDIY

f:id:BLAUdesign:20170914140529j:plain

 

 

metaldiy.net

 

 

なんと、横浜にある精密金属加工の工場が、一部の工作機械を平日の18時以降であれば、1時間あたり2,000円で貸してくれるとのこと。

もちろん、そこには「ボール盤」と言われる金属に穴を開ける機械が3つもある。

 

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メタルDIYのHPより引用

 

 

キター(^o^)

 

 

私にとってはメタルスライムよりありがたい

 

 

早速メールで加工内容を記載し問い合わせしてみると、

その工場の社長からとても親切な返信が帰ってきた。

 

 

僕の鞄の場合、軽量化のために大きな穴をいくつも開ける必要があるが、

一般的なその工場には直径10mmくらいまでのドリルしか無いそうだが、

僕の希望する40mmの穴を開けるには「こんなドリルが必要だよ」とわざわざAmazonのページのURLを添付して送ってきてくれた。

 

 

   f:id:BLAUdesign:20170906123439j:plain

 

早速アマゾンでそのドリルを購入し、メタルDIYへ。

メタルDIYとは株式会社関東精密

が主催するワークショップのようなスペースである。

 

笑顔で迎えてくれた杉田社長は大柄な体格にもかかわらず笑顔が可愛いおじさんです。

 

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セカンドサンプルを彼に見せ、希望する加工内容を伝えたところ、

 

「うわぁ、すごいですね。本当は我々みたいな金属加工屋がこういったことを企画しなきゃいけないんですけど、出来ないんですよね。。

いやぁ、しかし凄い。考えることは出来ても

実際に削りだしで作ってしまうことが凄い!

 

 

 

あはは。ここまで大変だったんですけどね。。。。ほんとに。。

 

 

 

そして、今節丁寧に、ボール盤の使い方を1から教えてくれました。

 

もともと手先は器用な方なので、すぐに使い方を覚え、すくすく穴を開けていきます。

 

 

そして穴だらけのフレームが出来上がりました。

それがこちら。

 

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なんか、ゼロ戦のフレームみたいになりました(笑)

 

実際の製品版は下の写真。(更に軽量化しています。)

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 素材を97%近く削っちゃいました。

 

削りカスはリサイクルです。

 

 

え?

 

そんなにまでして削りだしにこだわるのかって?

 

 

はい。

 

削り出すことによって、フレームに一切のつなぎ目がなくなり、ネジやリベットも必要無くなるんですよ。

 

 

さらに、一体型のシェルなので、薄くて軽いのに、合成が高いのです。

 

 

 

 

 

この時すでに1月下旬近く。

 

間に合うのか?

 

 

やれんのか?

 

 

完成品はこちら

 

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世界一美しい鞄を創る⑧へつづく

 

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*1:上の写真はリブの間にウレタンを敷き詰めたところ

世界一美しい鞄を創る⑥ 四面楚歌。そして大連への道。

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さて、ロックノブ、ロックプレートのロック機構。

 

ハンドルのデザインもほぼ出来上がってきたところで、だんだん完成の目処が出てきた。

 

前回までの記事はこちら

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モノづくりにはゴールが無い。

そこで、ゴールを定めるために、2016年4月に開催される展示会に出展することにした。

 

 

このままだと、無駄な時間だけが無意味に過ぎていく可能性もある。

 

 

なんとか、そこまでに間に合わせて完成させ、関係者の感触を確かめたい。

(※本来なら展示会には完成製品を出品するのだか、この時点でサンプル出品がやっとのスケジュールなので、今回はサンプル出品し、その後の感触で量産を決めようと思いました。)

 

 

 

さて、2015年10月も半ば、

数ヶ月、何度も繰り返し修正を加えてきた鞄のフレーム本体のCAD図面が上がってきた。

 

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これがあればもう工場に断られることもないだろう。

 

で、ドコに依頼するか。。。

 

 

アルミの削りだしを行うので、金属の切削工場に依頼するのは良いとして、

いろいろ切削方法を調べてみると「マシニングセンタ」という切削機械で削りだしを行うことが分かった。ただ、そのマシニングセンタの作業テーブルの大きさによって、私の鞄が切削できるかどうかが違ってくる。

 

 

ただ、ネットで調べてもそこまで記載しているHPはないので、とりあえず

「関東 金属加工 アルミ 切削」で検索をかけてみると、そんなに多くはないがヒットする。

 

 

その工場に1軒1軒電話連絡をして、鞄のフレームを切削してもらえることが可能か確認をしてみることに。

 

 

結論としては、1/3がお断り

残りの2/3がまずは図面を送ってほしいとのこと。

メールにて完成したCAD図面を添付して送信したところ、

 

 

その後、その全てがメールにて断ってきた。。

 

 

・・・・・。

 

おーい。

一体どうなっているんだ。

 

 

 

明確な理由も書いてなく一様に

 

 

 

「残念ながら弊社では請負かねる案件です。」

 

 

 

のようなことが書いてあるのみ。。

 

 

 

全く意味がわからず、

事前の電話連絡時に一番感じの良かった会社に電話をかけて見る。

 

 

 

「やはり難しいんでしょうか?」

 

 

 

営業「そうですね。いろいろ現場と話してみたんですが、ちょっと厳しいとのことです。」

 

 

 

「ぶっちゃけ、他の工場さんにもバックアップで同時に聞いていたのですが、実は全部お断りされてしまったんです。」

 

 

 

営業「そうですか・・・・。」

 

 

 

「このまま他の工場を探して同じ回答をもらってもラチが開かないので、差し支えのない範囲で、具体的にはどういった理由で出来ないのか教えていただけますでしょうか?」

 

 

 

営業「そうですね、正直に申し上げますと、出来なくはないんです。

どちらかというと、やりたくないといったほうが良いでしょうか。。」

 

 

(やりたくない・・・だと?)

 

 

「・・・加工自体が難しいんでしょうか?」

 

 

 

営業「角度が様々な方向からついているので、実際難しいというのもあります。

5軸のマシニングセンタならまだしも、3軸のマシニングセンタだと、段取りが厳しいんです。」

 

(※作業テーブルがx,y,z軸に、つまり左右前後に動く3軸タイプと、それ加えて斜めに動く5軸タイプがあります。)

 

「それに、この図面を見る限り、一番薄い底の部分が0.8mmですよね。そうすると、何日もかけて切削して、やっと底面部分を0.8mm残して切削している時に、万が一機械の動作や金属自体の疲労で底面にひびが入ってしまうこともあると思うんです。

 

そうすると、それはこちら側の責任になってしまうので、どうしてもリスクを考えるとお断りせざるを得ないんです。」

 

 

 

 

「・・・・。」

 

 

 

 

ただでさえ重たい金属。

その中でも軽いアルミニウム。

 

鞄が故、すこしでも軽いほうが良かろう、と思って図面を書いてもらうときに

薄く出来るところは極限まで薄くしてもらったのだ。

 

 

アダとなった。

 

 

0.8mmの部分が3mmあればイケるとのことだが、それはダメだ。

 

重たくて鞄として使い物にならない。

 

 

 

結局、関東地方の切削工場は諦め、対象を全国に広げて工場の検索をし、

前回と同様に電話連絡、その後メールにて図面を送るという作業を繰り返した。

 

 

結果として、約60前後の工場に送り、

見積をくれたのが たったの7社。

 

 

その他は、お約束のお断りメール。

ひどいところは返信もなし。。。

 

どうなっているんだ。

 

 

どうなっているんだ!

 

 

作れない。作れない。これじゃぁ、作れねぇじゃん。。

俺のカバン、作ってくれるところがねぇじゃん。。

 

 

 

そして見積をくれた7社のうち、一番高かったのは

73万円。

 

 

これはいわゆる「お断り見積」だろう。

 

 

んなもん、

こっちからお断りだよ!

 

 

残りは概ね35万円〜45万円。

それも、「一部の形状を◯◯の用に変更していただいてのお見積です。」だと。

 

 

 

デザイナーを舐めてんのか?

おっ?

 

 

 

でも、

 

展示会用には恐らく8個くらいは必要だろう。

さらに、2個くらいを余裕見ても10個。

 

フレームだけで400万円もかかってしまうよ。。。

 

 

 

 

 

高すぎるよ。。。

たかすぎるよ。/

 

 

タカスクリニックヨ。

 

 

 

 

日本では作ってくれるところが無い。

 

 

 

 

今回はメイド・イン・ジャパンで作ることを前提にしていたが、

製品版はまだしも、サンプルにそんな大金はかけられない。

 

 

 

 

 

CHINA

 

 

中国

 

 

 

 

サンプルの切削は中国でやったらどうだろう。

流石に日本ほど高く無いハズである。

 

仮に中国で出来たとしたら。。。。

 

それを日本の工場に持っていって、

 

「中国で出来たので、日本で出来ないわけがないでしょ!」

 

とでも言ってみようか。

 

 

 

 

 

さて、落胆した気持ちを入れ替えて、中国の工場を探してみる。

 

「中国 金属 アルミ 切削 工場 安」

検索ワードではなるべく漢字で検索をかけるが

どれも、どこか間違った日本語の中国切削工場のHPがいくつかヒットする。

 

 

 

 

「あなた希望する加エ(←カタカナのエ) できたら嬉しい。」

 

 

 

 

それは、僕も嬉しい。

 

 

 

少々不安だが、まずはその中でも一番マトモそうな、尚且つ日本企業とたくさんの取引をしていそうな大連の工場にメールで連絡をしてみる。

 

 

すると、すぐにレスポンスがあった。

 

日本語である。少したどたどしいが、れっきとした日本語である。

 

さらに図面などのやり取りも含めて細部を確認しあい、見積が添付されてきた。

 

 

 

15万円。

 

 

日本の半額以下ではないか。

 

 

これはあり?

 

 

早速発注書を送ります。

代金は現地で製品を確認後にその場で支払うことに。

 

 

 

 

 

さて、それから約3週間、

羽田発の飛行機に乗って初の大連に単身向かいました。

 

f:id:BLAUdesign:20170914132743j:plain

 

 

大連空港からはタクシーに乗ります。

 

「(英語で)(HPの住所のコピーをみせて)ここにお願いします。」

 

「◯☓△%&$#9|#”」

 

 

やはり、英語が通じない。

 

携帯のメールにあった住所を見せようと思い、携帯のGmailを立ち上げると。。。

 

はい、Gmailが通じない。中国Google、LINE、FBダメね。

 

 

口と耳をもがれた気分だ。

 

 

こんな時のために、中国語で住所を控えてきてよかった。

 

 

車窓からは、路上で立ち小便をしている大人をたくさん見かけた。

おっそろしい国だ。

 

 

住所を見せたにもかかわらず、この運転手、途中道行く人に4回くらい道を確認しながら約40分の道中を経て、目当ての工場にたどり着きました。

 

f:id:BLAUdesign:20170914133543j:plain

 

 

担当者「はじめましてハシモトさん。。私は王と言います。

サンプルは出来ていますよ。チョト マテテください。」

 

 

担当の王さんがしばらくして持ってきてくれたファーストサンプルがこちら。

 

 

※写真の場所は工場じゃありません。

f:id:BLAUdesign:20170901145911j:plain

 

かっこいい。。かも。。

 

 

しかし。

 

 

しかし。

 

 

 

重たい。

 

重さを計ってみると2.5kgもある。

 

 

うぅ。。。

 

 

 

 

 

もともとは、このようなアルミニウムのインゴットが材料になる。

 

f:id:BLAUdesign:20170928153435j:plain

 

この時、約重さは36kg。持つだけでもしんどい。

 

 

それをマシニングセンタ(切削機械)で約3日間ぶっ通しで削る。

下の写真は約1/3程、削り終わったところ。

f:id:BLAUdesign:20170928153534j:plain

f:id:BLAUdesign:20170928153537j:plain

 

これをどうやって、半分以下の重さにするのだろうか。。。

 

この時すでに12月も半ば。。

 

間に合うのか?

 

 

完成品はこちら

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世界一美しい鞄を創る⑦ へつづく

 

 

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世界一美しい鞄を創る⑤ デザインの神が降りた

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前回までのロック機構から脱却して新しい機構を考えなくてはならなくなった。

前回までの記事はこちら

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わかっていることは、

ボリュームノブのようなモノを回すことによって、フタが開閉する機構を考えること。

その際、人差し指の鍵のようなものが左右からニョキッと出て来るのはダサいのでNG。

 

 

さて、どうしたものか。

 

 

来る日も来る日も、右手をパチンコのハンドルを握るような形にして、手をくるくる回し機構をイメージしますが、どうしても人差し指の鍵がニョキッと出て来る仕組み以外、出てこない。

 

 

ここで一旦考えをゼロにしてみよう。

 

 

 

無。

 

ノブは円柱。

 

・・・・・。

 

 

鍵以外・・・・。

いや、鍵というワードは考えちゃダメだ。

 

 

 

 

 

ムム?

 

 

ムム?

 

 

ロックノブと繋がった円盤みたいなものが一緒にシンクロして回って、

反対側にある何かをキャッチして・・・。

 

 

ひらめきました。

 

当時のスケッチです。

f:id:BLAUdesign:20170928154810j:plain

 

 

スケッチを書いてE金属の田沼さんに図面化してもらいます。

 

 

初期の図面から数回改良を重ね、試作を重ね、出来たのがこいつです。

 

f:id:BLAUdesign:20170830204130p:plain

 

 

これは試作で、ロックプレートの裏側の写真です。

 

これを実際ロックが可動するのか、回した感はあるのか、確認するために

台座を作ります。

 

f:id:BLAUdesign:20170830204256p:plain

 

真ん中の穴に先程のプレートの芯を入れます。

 

上の写真ではわかりにくいのですが、穴の下に小さな鉄球が見えます。

このボールのしたにはバネが内蔵されていて、ボールは指で押すとボールはバネの伸縮で凹み、また上に戻ってきます。

 

これをプレートに引っ掛けることによって、ノブを回した感と開閉のオン・オフ感が出ます。

 

 

f:id:BLAUdesign:20170830204644p:plain

 

そして、プレートの表側の溝にフタ側に取り付けた超小型ベアリングが入り込み、

ロックされる仕組みです。

 

 

組み上げるとこんな感じになります。

f:id:BLAUdesign:20170928154916j:plain

 

 

回した感、最高!

たまらなく最高。

 

その日、踊る思いでこの試作を鞄に一人居酒屋で祝杯。

 

ビール片手に右手でノブを左右にカチャカチャ。

 

完全に電波系です。

 

 

 

で、製品版がこちら。

 

 

f:id:BLAUdesign:20170830204811j:plain

 

 

黒のアルマイト処理をし、表面にシルク印刷をし、そして周囲にダイヤモンドカットを施します。少しでも軽量化のために5つの穴を開けました。

 

 

本来は裏方のパーツですが、それも美しく。

イエイ!

 

完成した製品はこちら。

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世界一美しい鞄を創る⑥へつづく。

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世界一美しい鞄を創る④ ロック機構の迷走

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前回までの記事はこちら

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さて、図面作製の間に、肝心なロック機構を考えてみよう。

これがないと鞄は閉まらない。

 

高級オーディオのVolumeノブのような、ビジュアル面だけを先に考えてしまっていて、肝心の開閉の仕組みを全く考えていない。

 

おしゃれに着飾った知識ゼロのノータリン。

 

単純に『円柱が回るから、内側に鍵みたいなものを付けて、回して反対側に引っ掛ける感じ』くらいにしか考えていなかった。

 

イメージすると、右手の人差指の第一第二関節を曲げて、手首をくるっと回すようなイメージです。

 

円柱型のノブの動きからして、基本的にそれ位のものだろうと。

 

ただ、これも機械設計になるので、どうせ「図面」が必要になる。

加工方法は。。。。板金かな?

 

さっそくGoogle先生に「関東 板金 精密 試作」等で検索してみます。

 

幾つかヒットする中から、比較的近い横浜の港北地区にある板金工場に連絡をして

とりあえず数日後にアポを取ります。

 

 

その工場へは車で1時間弱で行くことができました。

受付で名を告げて、ご担当者をお待ちします。

 

 

しばらくして専務という方と企画長?というような肩書の方が机の向かいに座りました。

 

 

 

「はじめまして。実は◯◯◯◯(中略:アルミ製フレームの鞄の概要を話します)

それで、鞄に取り付けるロック機構の設計をお願いしたいのですが、業務の範疇でしょうか?」

 

工場「まぁ、大丈夫だと思います。ただ、ゼロからの構想設計ですので、少し時間はかかると思います。」

 

 

??

 

 

(・・・・たかだか左右に回転する鍵のシステムの設計にそんなにかかるのだろうか?)

 

 

「なる早でやっていただけると助かります。別のところで図面をお願いしていまして、最終的にはその図面にガッチャンコさせていのです。

それで、1つリクエストがあって、ノブを回したときに、何ていうんでしょうか、すこし抵抗感を出すというか、ただクルクル回るのでは開閉感が無いと思うんですよ。そこの方法論はまだわからないのですが。。」

 

 

工場「そうですね、分かりました。少しお時間をください。」

 

 

とりあえず、今日のところはOkayかな・・・?

 

 

秋葉原秋月電子で購入した見本となる「ロータリーエンコーダ」と安物のボリュームノブを渡して帰りました。

 

f:id:BLAUdesign:20170928155019j:plain

f:id:BLAUdesign:20170928155056j:plain

 

その後、担当者とメールのやり取りをするも、遅い遅い。

 

 

ほんっっっとに遅い(怒)。

 

 

忙しいのは十分わかるんだけど、メールの返信が平均3日後というのは、

このご時世では遅すぎやしませんかね?◯◯さん。

 

 

そんなこんなで、

「試作が出来ました」と連絡があったのは、最初に訪れた日から約75日後。

(ちなみにそこの工場のHPには「最短解決」というワードがありました。)

 

さて、それはそれとして、ようやく出来たロック機構の試作の確認に胸を踊らせながら車のハンドルを握ります。

 

 

 

そして、テーブルに出てきたのがこちら。

f:id:BLAUdesign:20170828112102j:plain

 

ロックノブが回ると、下の針金のようなもの抵抗して「回した感」が出るらしい。

いわゆる「線バネ」と業界では言うらしいのですが・・・。

 

 

抵抗感が全くありません。

 

 

逆に、針金のこすれる感が不快です。

 

 

 

「これ、線バネという着眼点はとてもいいと思うんですが、ちょっと感覚がイマイチなんですよね。。もう少しなんとかなりませんかね?」

 

 

工場「う〜ん、私もそう思っていたんですよね。。」

 

 

思ってこれかい!

 

 

「この針金を別の形状のものに変更できますか?

それと、なんというか、オン・オフを感じるような『引っかかり感』というのがあるともっと嬉しいのですが。。たとえば、『ポッチ』のような引っ掛かりをつけるとか。。」

 

 

 

ということで、作り直しになりました。

 

 

試作2号機がこちら。

f:id:BLAUdesign:20170928155152j:plain

f:id:BLAUdesign:20170928155210j:plain

 

 針金のこすれる感がまだ不快です。

 

 

 

 

 

そこから更に一ヶ月後、

 

「再度改良版の試作が出来ました」との連絡で再度来訪。

 

 

その試作がこちら。

 

f:id:BLAUdesign:20170828111959j:plain

 

 

先月の針金の部分が薄いプレートになっています。

更にオン・オフの引っかかりをだすポッチが!

 

f:id:BLAUdesign:20170828113424j:plain

 

「おぉ、なかなかいいじゃないですか!」

 

工場「考えましたよぉ〜(笑)」

 

実際にはこれらの小部品は四角のアルミ製ボックスに収めるて、鞄の内側にくっつけるらしい。

 

 

 

ノブを回した感じは、、、、(まぁ、悪くはない程度。)

 

 

 

ただ、実際に出来上がったものを何度も回して触って、鞄に取り付けたときのアングルや意匠的なものをイメージすると、、、

 

 

鍵の部分が鞄の下からニョキッと出てきてロックする。鞄が空いている状態でノブを回すと、鍵がニョキッと回転して出て来る。。。

 

 

ダサいくね?

 

 

いや、完全にダサい。ノブのビジュアル的なアイディアは斬新でも、肝心の機構自体が100年前の考え方だ。

 

 

 

 

これは、機構そのものを再考しなければならない。。。

 

ゼロから考えなければ。。。。

 

 

という焦燥感と同時にテーブルの上に見積が。。。。

 

 

(1)ロック機構 設計費 ¥240,000

(2)ロック機構 試作 2個 ¥278,000

 

 

合計(税込み)¥559,440 !

 

 

 

 

 

 

うぅ・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

モノづくりを始めようと思う皆さん。

 

 

試作をお願いする前に、可能であれば、ざっくりとした金額のイメージをいただくか、

予算をお伝えしましょう。

 

完成品はこちら

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世界一美しい鞄を創る⑤へつづく。

 

 

 

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世界一美しい鞄を創る③ ハンドルの造形

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前回の記事はこちら

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さて、三次元測定をしてCAD図面化という思わぬ情報をいただいてから3日後、

E金属という会社を訪れます。

 

受付で

「橋本と申します。13時に営業の田沼さんとお約束させていただいております。」

 

 

3階の会議室へ通され、暫し待ちます。

 

 

少しすすると、田沼さんが現れました。50代前半の気の良さそうなおじちゃんです。

電話でアポをとった経緯話しながら、持ち込んだ鞄の紙モックアップを机の上に広げます。

 

 

「と言う訳で、このモックを三次元測定してCAD図面化することはできますか?」

 

 

田沼「(モックをしげしけと見ながら)・・・・」

 

 

「難しそうですか?」

 

 

田沼「いえ、というより、このモックは手作りなので三次元測定しても、かなり修正が必要だと思います。いっそのことゼロベースで書いたほうが早いと思います。」

 

 

「・・・誰がですか?」

 

 

田沼「・・・私がです。」

 

 

うっそ!

 

 

「あれ、田沼さんって営業の方なんじゃないんですか?」

 

 

田沼「基本的には営業ですが、これくらいでしたら3D CADで描けると思いますよ」

 

 

ほんとかい!

 

たどり着きました。

 

 

とりあえず紙のモックを田沼さんに渡して数日後に連絡をいただくことになりました。

 

 

図面の問題はひとまず解決。

 

 

 

 

 

 同時に

次はハンドルのデザインです。

 

 

ひとえにハンドルと言ってもいろんな種類はあるのですが、

概ねブリーフケースのハンドルデザインは似たり寄ったりです。

 

プラスチック成型だったり、革を巻いたものだったり。。

 

これにもこだわりたい。ハンドルも鞄の顔の1つでないかと考えます。

 

で、考えます。

 

 

これが、なかなかグッドなアイディアが浮かばないので、

とりあえず、東急ハンズに行って、紙粘土を20個程買ってきました。

 

 

これは、成人男性の手の握り型を採るためです。

 

 

実際に握る形を視覚的に理解すれば、その形状のベースも自ずと決まってくるのではないかと思ってのことです。

 

そこで、成人男性 約50人の握り型を取って、先日のE金属にて三次元測定をしました。そこでそれそれの重なり合う点を平均基準点として1つの握り型のデータを作りました。

 

 

さて、それにデザインを施します。

 

 

鞄はアルミのフレームに本皮を貼っていきます。

ハンドルも意匠的にそれをなぞっていったほうが良いのはわかっています。

 

いくつかデッサンを描いて、ベースを工作していきます。

 

f:id:BLAUdesign:20170822142141j:plain

 

コルクに巻いた革の上に、フィン状の金属をかぶせます。

 

この形が成人男性の握り型をモチーフにしたものです。

 

そして、最終的に完成したものがこちら。

 

 

 

 

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上の写真はサンプル版。ネジ穴が空いています。

 

 

形状を更に美しくデザインします。

これもアルミのブロックから削りだしです。

 

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上の写真は製品版。さらにスリットが深くなり、美しく交差しています。

 

我ながら美しく機能的に、そして独創的な形が生まれました。

これもアルミ削りだしです。

 

 

パズルのピースが埋まってきました。

 

 

残るは大物は

 

・ロック機構の構築

・革

・アルミ削り出し加工

 

というところでしょうか?

 

全てはE金属の田沼さんの図面マチ。。。。。

 

 

世界一美しい鞄を創る④ へ続く

 

 

 

 

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