BLAU DESIGN’s blog

前代未聞のモノを創る。モノづくり記録です。

世界一美しい鞄を創る⑨ 懇願

革工房の孤高の革職人、大島さん。

なんて軽い優しい笑顔で恐ろしいことを言うんだろう。

 

前回までの記事はこちら

blau.hatenablog.com

 

この2週間。

 

彼は、何も手を付けてくれていませんでした。

 

 

 

でも、冷静に考えます。

 

 

そう、大島さん。

決して悪気は無いんです。数少ない国内の革工房、それも腕のよい職人。

それも1人でされているので、土日の休みすら無いんです。

 

 

そう、悪気は無いんです。

 

 

 

でも、僕もそう。

 

前を向いたらキリがない。(クリエイティブには終わりがない。)

 

後ろを向いたら後がない。

 

もう、本当に時間がない。

 

 

 

ここは嫌われてもいい。

無理を承知でお願いするしか無い。

 

 

 

「忙しいのは十分承知です。

十分承知の上でお願いがあります。どうしてもあと1ヶ月で5個の鞄のサンプルを完成させたいんです。

 

いや、完成させないとヤバイんです。

ほんとに、ほんとにお願いです。僕も出来ることはなんでも手伝います。

なんとか、なんとか、ご協力していただけないでしょうか?」

 

 

 

「そうっすよねぇ。。。 ・・・・そうっすよねぇ。

 橋本さん、夜は忙しいですか?」

 

 

 

 

ん? 飲み?

 

 

 

私「夜はいつでも大丈夫ですよ」

 

 

 

大「明日、22時くらいに来れます? いつもの仕事が終わってから作業をするとなるとそれくらいの時間になるんですが、大丈夫ですか?」

 

 

 

私「 全然大丈夫です!

 

 

 

 

 

ということで、明日の夜からサンプル製作の作業に入ってもらうことになりました。

 

とりあえず、確約が出来たので一安心。。ふぅ〜

 

 

 

 

安堵なのか、それとも日本語では表現できない感覚なのか、

そんな感じで工房を後にし、車のハンドルを握りながら考えを整理する。

 

 

とりあえず、革に関しては、下駄を預けるしか無い。

 

それしか無い。信用。

 

 

残るは。。。。。

 

 

 

 

内装だ。

 

 

 

 

内装。

 

鞄の中には、人によっていろんなものが入る。

よって、革で内装を施すのはNG。

 

なぜなら、すぐ引っかき傷が出来るから。

 

 

よって、高級感漂うスウェードを内装に施したい。

 

 

 

でも。

 

 

でも、この時点でいつものようにGoogle先生で業者を探す余裕はない。

 

 

実は少し当てにしていた人がいる。

 

 

 

 

 

実母だ。

 

 

 

 

 

母は、40年近く、ファッション業界の第一線でパタンナーとして腕を奮ってきた。

ファッション業界でいうパタンナーというのは、

デザイナーが書いた平面のデザインをイメージどおりに仕上がるように想像して、その裁断パターンを作って、布に当て、裁断して縫い合わせるような仕事らしい。

 

 

クリエイティブ。

 

 

以前、当時の母の部下だった人に聞いた話だと、

 

「橋本さんのお母様は、ほんとに凄かったですよ。ぶっちゃけ日本で10本の指に入るくらいの職人だったんじゃないですか?」

 

 

 

 

 

マジで?

 

 

 

 

おふくろ、そんな人だったの?

 

 

僕が子供の頃は、すぐビンタする母。

還暦を過ぎてからは健康食品にハマった母。

マルチまがいの健康食品を信仰している母。

ビールを飲むと目が据わる母。

 

 

 

そんな母も今年でもう70歳。

 

 

 

今は千葉の家で、近所の老人を集めて健康体操とかしているとか。。

ナンノコッチ

 

 

 

まぁ、そこは腐っても親子。

翌日の土曜日、アルミのフレームを持って千葉の実家へ向かう。

 

 

 

「何?久しぶりにどうしたの? 仕事は上手く行っているの?」

 

 

 

「うん、そのことなんだけどね。

 

(中略)それで、この鞄の内装を作って欲しいんだよ。で、これが生地ね。」

 

 

 

「えぇ〜 出来ないよ〜。」

 

 

 

「やって。」

 

 

 

「だって、これ、スポンジ生地にスウェードを縫うんでしょ?」

 

 

内装は、1mmのスポンジにスウェードを縫い付けて、それをアルミフレームの内側に貼り付けます。(※あくまで展示会用のサンプルの仕様で、製品版はもっと高度です。)

 

f:id:BLAUdesign:20170908192209j:plain

 

 

「そう、そうなんだよ。おふくろだったら軽いでしょ(笑)」

 

 

 

「私が持っているミシンだと、スポンジに通る針が使えるかわからないのよ。スポンジとか、特殊な裏地に使う生地に通す針は太い針が必要で、今のミシンではその針が使えないかもしれないよ。」

 

 

 

ここにきて、大田区の工場みたいなことは言わんでくれ。。。

 

 

 

「あ、そうなの? でも、なんとかやってみてくれないかな?」

 

 

 

 

半ば強引にお願いして、ビールのプルトップを開けます。

 

 

プシュー

 

 

私は普段、フィットネスジムでは重いバーベルを持ち上げますが、

ここでは母を持ち上げます。

 

 

 

「世界一美しいブリーフケースを作りたいんだ。こんなこと、世界中の誰もやっていないんだよ。あなたの息子がそれをチャレンジするんだ。売れるかどうかは分からないけど、やる価値はあると思うんだよ。

 

知っての通り、僕はデザインの勉強もしたことはないし、今も専門的にするつもりはない。でも、感覚の具現化はマニュアルはいらないと思うんだよ。

それに、(今までの工場での断られ具合を少々大袈裟に言う)日本のモノづくりの根源はクソだよ。70年代の高度成長期で止まっちまってる。

今は個人、もしくはスモール企業がイノベーションをする時代なんだよ!

これを即興でできるのはお袋しかお願い出来ないんだよ!」

 

 

 

 

イノベーションって何?」

 

 

 

 

そこ?

 

 

 

わかりやすく説明しました。

 

 

 

無いものを創るということ。

 

 

 

その後は、母が夢中になっている健康食品のネットワークビジネスの話になったり、子供の頃に話になったり、酒浸りの親父の話になったり。。

 

 

 

とりあえず、持ち上げまくりました。

 

 

 

感覚重量でいうと、

 

 

 

90kg

 

 

 

あげたことねぇ〜

 

 

 

とりあえず、残り一個のアルミフレームのサンプルと日暮里で購入した最高級のスウェードの生地を置いて翌日東京に戻りました。

 

 

 

 

たのむよ おふくろ。

 

 

根性見せてくれ!

 

もう、時間が無いんだよ・・・・。

 

 

 

頼むね!

 

 

 

しぶしぶ頷く母がいました。

 

 

完成版はこちら

www.blau.tokyo

 

 

 

世界一美しい鞄を創る ⑩ へ続く

保存

保存

保存