BLAU DESIGN’s blog

前代未聞のモノを創る。モノづくり記録です。

世界一美しい鞄を創る⑧ もうだめかもしれない。

前回まででようやく鞄のアルミ削り出しフレームの完成は見えてきた。

 

前回までの記事はこちら

blau.hatenablog.com

 

長かった。 ほんとに長かった。

 

 

ようやく最後の行程、表面の革、として内装の仕上げを残すのみ。

展示会まで残された時間は約2ヶ月半。

 

なるべく早く完成させて、展示会場で配布するパンフレットも作らなければならない。

 

まずは革だ。

 

早速革工房をGoogle先生に聞いてみます。

革工房と言えば東京下町。

 

「東京 墨田区 台東区 革工房」

 

 

あれ?

 

 

思ったよりもヒットしない。

それでもいくつかリストアップして、いつも通りまずは電話連絡をする。

 

 Ring Ring Ring...

 

「実はアルミのフレームをベースにした鞄を企画しておりまして、それで、そのアルミのフレームの上に革を貼っていただきたいのですが、そのようなご相談は御社の範疇でしょうか?」

 

 

 

工房「えぇっと、ちょっとお電話だとあまりイメージがつかないのですが・・・」

 

 

 

「すみません。例えば、アルミで出来た昔のお弁当箱を想像していただけますでしょうか?そのフタの上の面に革を貼りたいんです。」

 

 

 

工場「アルミに革は縫えませんよ。」

 

 

 

「まぁ、それはそうだと思うんですが、何か方法があるのかというところからご相談をさせていただければと思うのですが。。」

 

 

 

工場「申し訳ないのですが、他の仕事も立て込んでいて、ちょっとお受け出来そうにありません。」

 

 

 

まーたこれだ。

 

 

 

なんで簡単に断ることが出来るんだろう。

ちょっとくらい会って、相談してくれてもよかろうもん。

 

 

まぁ、まだ他に幾つか工房はある。どこか、1つくらい相談に乗ってくれるだろう。

 

 

 

 

 

 

甘かった。

 

 

 

 

 

そもそも、国内で小ロットやサンプルを作ってくれるような革工房自体の絶対数が少ない。途中で仕入れた情報だと、ほとんどが費用の安い中国に仕事が流れていき、国内の工場、工房はどんどん減っていったそうだ。

 

それに、国内の残っている工房はそれなりにルーティンの仕事で忙しく、職人の人手不足も加わって、会って相談することすら出来ない。

 

 

 

それでも、探して探して、電話して、繰り返し当たってみたところ、

ようやく1件だけ好感触な工房が見つかった。

 

 

 

「(中略)と言う訳で、アルミで出来ているフレームに何らかの形で革を貼りたいんです。」

 

 

 

工房「やってみないとわからないですが、大丈夫じゃないですか?」

 

 

 

Got it !

 

 

 

最終的にいっつもこのパターンだ。なぜ最初からこうならないのだろうか・・・。

 

 

 

翌日東京スカイツリーのほど近くにある墨田区の革工房を訪れました。

 

 

ほんの二部屋くらいの大きさのその工房は、作業机、二台のミシン、革漉きマシン、そして大量の革のロールが鎮座していました。

 

 

 

「あの、先日お電話いたしました橋本です。」

 

 

 

「大島です。どうもどうも(笑顔)」

 

 

 

 

あれ? なんて軽やかな始まり?

 

 

 

大島さんは30代後半から40代前半の下町の若いにーちゃんのような職人です。

 

どうやらこの工房で、は基本的に彼が一人で作業されているようです。

作業中のテーブルには、製作途中のクロコダイルの長財布がたくさん山積みになっていました。

 

 

 

これは期待できるぞ。

 

 

 

「(中略)それで、このアルミのフレームに革を貼りたいんですが、どうですか?」

 

 

 

「大丈夫だと思いますよ。2mmの穴が3mmピッチで周囲に空いていれば手縫いで縫うことも出来ますし、接着もできるんじゃないですか?」

 

 

 

マジっすか?

 

 

 

「内装はどうします?革であればやってみますけど」

 

 

 

「内装はスウェードを貼りたいんで、別で探してみます。」

 

 

 

「分かりました。型紙とかは無いですよね? 」

 

 

 

「ケースを型取りして作ります。普通の工作用紙で大丈夫ですか?」

 

 

 

「大丈夫ですよ。型紙ができたら送ってください。時間を見つけてサンプル作っておきますよ。」

 

 

 

 

Woooooooo!

 

 

 

 

最高じゃないか!

 

 

革職人ってイメージしたら頑固一徹をイメージしていたけど

腕は良さそうだし、人柄も柔らかだし。

 

 

僕はアルミフレームのケースを工房に預けて、その足で会社に戻り、

途中の東急ハンズで購入した工作用紙に、鞄の周囲をトレースし、丁寧にハサミで切り取り、周囲を紙やすりで磨いてバリをとり、その日のうちに大島さんに送りました。

 

 

あとは、サンプルの上がるのを待つのみ(笑)

 

 

ふふ。

 

 

さて、大島さんがサンプルを作ってくれているこの間にもやることがたくさんある。

 

 

 

 

今思えばこの2ヶ月間は恐ろしいほどのスピードでいろいろなことをしていた。

 

 

 

 

そうでもしないと、サンプルが間に合わず、出展費用を含めた展示会の費用、約200万円が無駄になってしまう。

 

 

まずは、細かい部品だが、大事な「ヒンジ」。

日本名「蝶番」。

 

鞄のフタとケースをつなぎ合わせて、それを軸に開閉するものだ。

 

 

一般的にはヒンジは種類も多く、そんなに苦労はしないと思いがちだが。。

 

 

以前、ゼロハリバートンの鞄を持ち歩いていた時があった。

当時の僕は、広告の仕事をしていたので、鞄の中は常に書類でパンパンだった。

 

ある日電車に乗っている時に、何かの拍子でラッチが外れ、鞄のフタが下に180度開いた。

 

 

その瞬間、鞄の荷物はまるでスローモーションのように、すべて車内に広がった。

 

 

エロ本が入っていなくて、ほんとに良かった。

 

 

万が一にも、こんなことがあってはいけないので、通常使われるヒンジではなく、特殊なヒンジを採用する必要がある。

 

 

ふと、机の引き出しにカルティエのボールペンが入っていた赤いケースがあることを思い出した。

 

これは宝石箱と同じような開閉感で、少し力を入れてフタを開けると一気に開き、

少し力を入れてフタを閉めると一気に閉まる。

 

どうなってんだ?

 

と思い、バラします。

 

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バラしてわかったことは、コの字型のバネがヒンジについているだけ。

 

ただ、これだと、開けるか閉めるのどちらかになる。

 

 

 

 

特殊なヒンジ。

 

特殊なヒンジ。

 

そう、トルク(抵抗力)のあるフリーヒンジだ。

 

 

これはどういうことかというと、

フタを任意の位置で留めることが出来るというスグレモノである。

 

 

例えば鞄を左手にもって、右手でフタを開けて中のものを取ろうとしたとき、

普通であれば、フタは180度勝手に開いてしまうため、一度鞄を机の上に置く必要がある。

 

しかし、フリーヒンジを使えば、任意の位置でフタを留めることが出来るため、立ったままで、フタを好きな位置で止められるため、中の荷物が溢れる心配がない。

 

些細な事でも、実はとても重要なことなのだ。

 

つまり、こんな中途半端な位置でもフタが留まる。(完成品)

 

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イエイ!

小さなところも妥協なく、考える。

 

 

 

 

さて、次はアルミフレームの二次処理である。

 

 

一般的にはアルミは削りっぱなしでほっておくと、酸化して、だんだん白っぽくなってくる。

また、それだけではなく、本来柔らかい金属のため、表面に傷が付きやすい。

 

 

そこで、一般的にはアルマイト処理という二次処理をおこなう。アルマイトを施すとアルミの表面が強くなるのだ。

 

 

アルミフレームの肌に関して、僕には1つのイメージが合った。

 

 

AppleMac Bookである。

 

 

金属製のユニボディでありながら、決して冷たいイメージがなく、逆にどことなく

愛らしい手触りだ。

 

 

基本的に素材が同じなので、出来るはず。・・・・だと思う。

 

 

早速Google先生

 

アルマイト処理 関東」で検索してみる。

 

これは幾つかヒットする。

その中で、比較的東京に近い工場に電話連絡をし、アルミフレームを持参し見積をもらうことにした。

 

 

依頼する作業内容は、まず切削したばかりのアルミフレームに、細かな砂を吹き当てて表面を少し粗す。これはサンドブラストという処理(梨地処理とも言う)で、あえて目に見えない傷を付けることによって、傷を付けにくくする効果がある。

 

そのブラスト処理をしたものに、アルマイト処理をする。アルマイト処理は特殊な液体が入った水槽にアルミ素材を一定の時間漬け込むと、その処理が完成する。

 

見積の結果、多摩川の土手沿いにある工場にお願いすることになった。

工場長は北斗の拳に出てくる雑魚キャラのボスのような出で立ちなのだが、人は良い。

 

 

そこで、砂の大きさ、アルマイト処理の色など、幾つかの組合せを試して、ようやく納得の行く処理が出来上がった。

 

 

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ほぼ一緒(笑)

 

 

そして、もう一種類、今まで誰もやっていない鞄の表面処理がある。

それを是非やってみたい。

 

 

 

と、その前に、

そろそろ革の表面のサンプルが出来ているかもしれない。

 

 

 

大島さんに携帯でショートメールを送る。

 

 

「明日あたり、行っても大丈夫ですか?」

 

 

「午後だったら、大丈夫っすよぉ!」

 

 

ひゃっほー

 

 

もうゴールはすぐそこだ!

 

 

 

 

 

いやぁ、ほんとに長かった。

ここまで怒涛の10ヶ月。

 

イラストを書いても、図面が無いと断られ、

 

図面を書いても工場に出来ないと断られ、

 

アルミに革は貼れないと断られ。

 

ある種のいじめにも近い状況だったかもしれない。

 

 

いやぁ、ほんとに長かった(涙)

うぅ

 

 

 

踊る心をなんとか押さえて、工房の前に車をとめ、勢い良くドアを閉め、

工房の扉を開け大島さんの背中に声を掛ける。

 

  

 

「お疲れ様でーす!(笑顔)」

 

 

 

「おつかれーっす(笑顔)」

 

 

 

「いろいろと、無理言ってすみません! それで上手く出来ました?(笑顔)」

 

 

 

ちょっと仕事が立て込んでて、まだ手を付けてないんっすよ。すんませーん(笑顔)

 

 

 

私「えっ?」

 

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ぶっ倒れそうになりながら、

全身の毛という毛が逆だって、白髪になったような気持ちになった。

 

小川直也に何発ものSTOを受けたくらいの衝撃だった。

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東スポWebからの引用

 

 

 

僕の視線の先には、数日前に送った鞄の型紙の封筒が封も切られずにそこに置いてあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

もうダメかもしれない。

 

今度こそ、もうダメかもしれない。

 

 

 

もう二月中旬。

 

 

展示会用パンフに入れる鞄の撮影も含めると、どんなに遅くても3月の中旬までにすべてのサンプルを仕上げないといけない。

 

 

 

 

 

もうダメだ。

もうダメだ。

 

 

人生で初めて、フリーズした。

 

完成版はこちら

www.blau.tokyo

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世界一美しい鞄を創る⑨へつづく

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